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インセンティブの限界とは? ~内発的なモチベーションの重要性~

2020/10/19

プロジェクト管理ツール

インセンティブのイメージ

誰かにより良い仕事をしてもらいたいときに採用すべき、効果的な手段は何でしょうか?多くの方は「報酬を上げること」と答えるのではないでしょうか。これはインセンティブが仕事のパフォーマンスを向上させるという、常識的な解決手段です。

ですが、社会科学や経済学、そして心理学といった科学から近年得られた知見は、まったく異なるものです。

なんと「インセンティブは、ごく限られた分野の仕事ではパフォーマンスを向上させるが、現代における多くの仕事ではインセンティブがパフォーマンスに悪影響を及ぼす」というものです。

科学から得られた知見と常識のズレはいったい何を意味しているのでしょうか?そしてチームのメンバーによい仕事をしてもらうために取り組むべきことは何なのでしょうか?

今回は『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか(ダニエル・ピンク著、大前研一訳、講談社、2015年)』においてダニエル・ピンクが示したインセンティブの限界と、自発的なモチベーションの重要性をご紹介します。ダニエル・ピンクは副大統領のスピーチライターをつとめ、数多くの組織論を著した人気作家です。

インセンティブは必ずしも効果的に作用しない!?

成果に応じてインセンティブを与える、つまり良い仕事に対して高額な報酬を支払うことには、誰もが納得するところでしょう。ですが、成果に応じてインセンティブを与えることと、インセンティブを約束して成果を期待することは、必ずしもイコールではないのです。

ダニエル・ピンクは膨大な資料を調査し以下のような結論を得ました。

「単純なルールがあり、正解が明らかである「仕事」の場合は、インセンティブは効果的に働きます。例えばルーチンワークのように段取りが決められており、明確なゴールが見えている仕事です。この場合はインセンティブを提示することで成果の向上を見込むことができます。

一方、明確な答えがすぐには見えない、あるいは答えがあるかどうかも分からないような「仕事」の場合は、インセンティブは効果的に働かないか、むしろ害となります。

インセンティブは集中力を向上させます。したがってルーチンワークのような、明確なルールのもとに実施する「仕事」に対しては、インセンティブが効果的に働きます。

しかし、集中力が向上するということは、視野が狭まるということでもあります。正解そのものを模索するような「仕事」に臨む際、インセンティブによって視野を狭めてしまうと、正解をみいだすことが難しくなるのです。」

さて、以上のような説明ですが、これに対して納得いかないという方は多くいらっしゃることでしょう。そこで同氏の主張の裏付けについてご紹介させていただきます。

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科学が明らかにしたインセンティブの限界

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行動経済学の権威であるダン・アリエリーはMIT(マサチューセッツ工科大学)の学生を対象に、報酬の高低がタスクを遂行するパフォーマンスにどのような影響を与えるのか調べました。

タスクとして「単調でシンプルなタスク」と「複雑でクリエイティブなタスク」が用意し、これらを実行する学生に異なる金額の報酬を提示する、というものです。この実験の結果は次の通りです。

タスクが機械的に遂行できる場合、報酬は期待通りに作用した。すなわち高い報酬を提示されるほど、より高いパフォーマンスを発揮した。
これに対して、タスクの遂行に少々でも認知機能が要求される場合は、報酬は逆効果となった。すなわち高い報酬を提示されるほど、パフォーマンスは低くなった。

さらに同氏は、この実験結果が高学歴であるMITの学生に限った現象であるかどうかを検証するため、インドの貧しい地域でも同様の実験を行いました。文化的・経済的な背景が異なるにもかかわらず、実験結果は同様となりました。

つまり、同氏が示した「複雑な仕事に取り組むとき、インセンティブを与えることはパフォーマンスを悪くする」という発見は、人類に普遍の現象である可能性が高いのです。
これらの実験結果は2005年、 Large Stakes and Big Mistakes というタイトルにまとめられ、 Federal Reserve Bank of Boston Research Department Working Papers に掲載されました。

さらには、ノーベル経済学賞受賞者を多数輩出しているロンドン・スクール・オブ・エコノミクスもまた、2009年、企業における成果主義に関する事例を調べ「金銭的なインセンティブは全体的なパフォーマンスに対して悪影響を与えうる」と結論づけました。

まとめましょう。科学は「複雑な仕事に対するインセンティブの効果には限界がある」と明らかにしたのです。もちろん、十分なインセンティブを与えることは必要不可欠です。ダニエル・ピンクも「基本的な報酬ラインは適切かつ公平でなければならない」と述べています。

しかし、過剰なインセンティブは、パフォーマンスを向上させるどころか、むしろパフォーマンスを低下させてしまうのです。

なお、ダン・アリエリー氏は『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」(ダン・アリエリー著、熊谷淳子訳、早川書房、2013)』などの著作でも知られています。ビジネスマンにとって興味深い知見が多く含まれているため、こちらもあわせて一読されることをお勧めします。

インセンティブに代わる「自発的なモチベーション」

インセンティブとは、外部から与えられるモチベーション、つまり外発的なモチベーションです。ですがインセンティブに限界があると判明した以上、外発的なモチベーションに頼ってパフォーマンスの向上を狙うことはできません。

複雑で答えの見えない仕事へ取り組むためには、仕事に取り組む本人の内部から沸き起こるモチベーション、つまり自発的なモチベーションが重要になります。

ダニエル・ピンクは自発的なモチベーションを生み出す要素として、三つの事項を挙げています。

・自律性
・熟達
・目的

これら三つの要素を満たしうる企業や職場は、実際に多くのイノベーションを生み出しているのです。

それぞれの要素について、以降の節で詳しくみていきましょう。

モチベーションを生み出す要素1:自律性

モチベーションを生み出すイメージ

ここでいう自律性とは「自らの意思で行動を決める」という意味です。「やりたいようにやる」といいかえてもいいでしょう。もちろん仕事である以上、達成すべき目標が存在します。重要なことは「目標を達成できるなら、やり方は各自に任せる」ということです。

従業員へ適切な報酬を提供できているならば、経営者が次に考えるべきことは更なる報酬を上乗せすることではありません。

「自律性を促進するための仕組みを作ることです。」

自律性を促進するための仕組みとして有名なのが、かつて Google社 が実施していた「20%ルール」です。勤務時間のうち20%を、好きなプロジェクトに割り当ててよいという制度です。これはまったく仕事と関係ないプロジェクトでも構わないというユニークなものです。

現在の Google社 では20%ルールは廃止されてしまいましたが、かつては Gmail をはじめとする多くの新サービスが20%ルールの時間から生まれました。20%ルールの優秀な点は、勤務時間のすべてではなく一部を自由にした、というところでしょう。

なお、自律性の促進として裁量を与えられる事物は、個人の時間だけではありません。ダニエル・ピンクは促進すべき自律性として以下の「四つのT」を提案しています。

・課題(Task)
・時間(Time)
・手法(Technique)
・チーム(Team)

つまり、プロジェクトチームを自由に編成する、採用にあたって人事部や各部門の責任者ではなくチームメンバーに決定権を委ねる、などなど、自律性を促す方法は多くあります。

モチベーションを生み出す要素2:熟達

「仕事に熟練する」ことです。平易に表現するなら「成長する」としてもよいでしょう。自分を成長させたい、あるいはより良い自分になりたいと願うのは健全な心の働きであり、この心の働きを生かさない手はありません。熟達したいと願う心の働きを組織が阻害するのは最も避けるべきマネジメントであるといえるでしょう。

熟達には三つの法則があります。

1.成功体験の法則
2.忍耐の法則
3.漸近線の法則

1.成功体験の法則
ダニエル・ピンクは「フロー状態」と呼んでいます。成功体験といっても、大げさな話ではありません。小さな何かが上手くいった、その時の「楽しさ」を認識し、肯定すればよいのです。

また、周囲の人々がその楽しさを肯定することも重要です。成功体験の法則は、いわば仕事に楽しみを見いだすための心構えとなるものです。この心構えは個々人だけでなく、組織全体の風土に根付く必要があります。

2.忍耐の法則
熟達するためには耐えしのぶ期間が必要であり、しかも熟達過程のほとんどの期間を占めるという法則です。エキスパートといわれる人々のパフォーマンスに関する研究でいかなる分野におけるエキスパートも、その「高み」へ達するまでに長時間にわたる厳しい訓練を積んでいることが明らかになっています。天賦の才だけでなく、熟達するためには地道な努力を続けることが必要不可欠なのです。

忍耐を要求されるとき、かつて得た成功体験が二つの面から生きてきます。
一つ目は、どのようにすればかつての成功体験を得られるかイメージしやすくなることです。質の低い訓練や学習を避けることにも役立つでしょう。二つ目は、成功体験は忍耐を要求されるつらい時期を乗り切るための心の支えになるということです。

3.漸近線の法則
どれほど熟達しても完璧になることは決してない、ということです。トップレベルのスポーツプレイヤーやアーティストが口を揃えて「自分はまだ未熟だ」というのは、謙遜しているのではなく、心の底からそう感じているからなのです。

世界に名を知られる天才浮世絵師・葛飾北斎ですら、晩年に「自分は猫一匹さえろくに描けねえ」と嘆いて涙をこぼした、という逸話があるのです。この自分自身の至らなさを認識し、受け入れることが、熟達するための王道であるといえるでしょう。

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モチベーションを生み出す要素3:目的

モチベーションアップのイメージ

ここでいう目的とは「何のために仕事をするのか」という意味です。企業にせよ、個人にせよ、従来の「仕事」は利益を得ることが最大の目的でした。社会的責任を果たすとうたいながらも、結局は利益だけを追求してきたのです。

ですが、利益の最大化だけを追求すると、仕事に携わる人間の能力を引き出すことができず、長期的には利益が減少してしまう、ということが分かってきました。

むしろ利益を利用して、社会的に意義のある「目的」を現実に達成する企業こそが人々から支持されるようになり、結果として逆に大きな利益を得るようになるという現象が起きているのです。

例を示しましょう。それも日本の企業です。未来工業株式会社、という電気・水道・ガス設備等の資材を製造している企業をご存じでしょうか。同社のホームページより「経営の基本方針」を引用します。

“当社は「常に考える」を社業の企業理念とし、ユーザーの使い易い製品を提供するために「絶え間ない新製品の開発」、「ユーザーに対する迅速な対応」、「社員の自主性及び創造性の重視」、「地域社会への貢献」など、創業以来時代を先取りした経営を行い各事業の拡大を目指しています。

また、未来グループ各社の基盤強化を図るため、未来工業株式会社を中心に、経営の効率化および各グループ企業の独自性を生かした経営による継続的な成長と収益の拡大を図り、企業価値の最大化を目的としています。“

同社は「社員旅行でクイズ50問に正解したら半年間の有給休暇を与えられる」といったユニークな制度を数多く運用していることで有名になりました。
また、「育児休暇3年」「年間休暇140日(有給休暇除く)」といった福利厚生に手厚い「超ホワイト企業」などと紹介されることも多いです。
しかし、真に注目すべき点は、科学者やダニエル・ピンクが「内発的なモチベーションが重要である」と主張するよりはるか以前から、従業員の自発的なモチベーションに重きを置く経営を貫いてきた、というところでしょう。結果として高い収益率を維持し、財務的にも優良企業であり続けています。

さて、企業は組織であり、組織を形成しているのは人間です。人間は自分が信じる「より良い目的」を達成したいという欲求を抱えています。人生の多くの時間を費やすことになる仕事において、その目的を達成したいと考えるのは自然なことでしょう。

インセンティブが全くなくても、社会的に意義があるということが大きなモチベーションになる例として Wikipediaがあげられるでしょう。 Wikipedia の記事は有志のボランティアが書いています。記事の執筆者に報酬は全く支払われません。

執筆者は「知識を共有するために記事を作成する」という自発的なモチベーションによって筆をとっています。膨大な記事を保有するサイトの運営は、善意の寄付金でまかなわれています。

Wikipedia とは対照的な百科事典サービスがありました。かつて Microsoft 社が作成・販売していた Encarta という百科事典サービスです。プロジェクトメンバーには高い報酬が支払われ、大勢のプロが記事を書いていました。ですが Encarta は2009年にサービスが打ち切られました。 Wikipedia の人気に圧倒され、採算が取れなくなったのです。これはインセンティブにもとづくビジネスモデルの限界を示す良い例だといえるでしょう。

企業は社会と接触する組織です。社会からの支持を失えば企業は存続できません。社会的に意義のある具体的な目的を掲げ、現実に達成できる企業こそが、従業員の高いモチベーションを維持し長期的に利益を得られるようになるのです。

私たちは何をするべきか? まとめ

今回はインセンティブの限界と、自発的なモチベーションの重要性をご紹介しました。
現在、皆さんが取り組んでいる仕事の多くは、複雑なルールにしばられ、あるかどうかも分からない答えを探すような内容でしょう。

少なくとも、この記事を読んでいらっしゃる方は、より効率的・効果的にプロジェクトをマネジメントしたいという動機をお持ちかと思います。マネジメントもまた、複雑なルールがあり、単純に遂行できない業務です。

そのなかにあって、プロジェクト管理ツールは自発的なモチベーションを作る手助けとなります。可視化されたタスクをひとつひとつこなしていくことで「成功体験」を積むことができます。プロジェクトの目的を明確にし、共有することができます。

いつもは意識していなかったプロジェクト管理ツールやグループウェアも、使い方を少し工夫するだけで自発的なモチベーションの喚起につなげることができます。今回の記事が、皆様の仕事がより良いものになる一助となれば幸いです。

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