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プロジェクト管理におけるステークホルダーマネジメント

2019/12/02

プロジェクトマネージメント

1つのプロジェクトには様々な関係者、すなわちステークホルダーが存在します。ソフトウェアの受託開発だけを例に挙げても、ソフトウェアを実際に開発するプロジェクトメンバー、ソフトウェアを発注する顧客、競合他社、株主、金融機関…などなど、さらには自分自身がステークホルダーであると考える人々など、実に多様です。

今回はさまざまな立場のステークホルダーに対して正しく接し、プロジェクトを成功へと導くステークホルダーマネジメントについて解説します。

ステークホルダーマネジメントの重要性

世界的に利用されているプロジェクト管理ガイド(プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててマニュアルのようにまとめたもの)には10のマネジメント領域と5つのプロセスが定義されています。

10のマネジメント領域は以下のように定められており、ステークホルダーマネジメントは1つの領域として位置付けられています。

1. 統合マネジメント
2. スコープマネジメント
3. スケジュールマネジメント
4. コストマネジメント
5. 品質マネジメント
6. 資源マネジメント
7. コミュニケーションマネジメント
8. リスクマネジメント
9. 調達マネジメント
10. ステークホルダーマネジメント

色々な状況やとりまく環境により発生するさまざまなマネジメント領域の1つとして考えられていることそのものが、ステークホルダーマネジメントの重要性を表しています。

プロジェクト管理におけるステークホルダーマネジメントとは

ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトに影響を与えたりプロジェクトによって影響を受けたりする可能性がある個人やグループまたは組織を特定し、ステークホルダーの期待とプロジェクトへの影響を分析、ステークホルダーがプロジェクトの意思決定や実行に効果的に関与できるような適切なマネジメント戦略を策定するために必要なプロセスのことを言います。やや長いので、それぞれを分解してみましょう。

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ステークホルダーとなるプロジェクトへ関与する可能性のある主体

ここでいう主体とは個人、グループ、組織など、プロジェクトの意思決定や実行に関与しうる単位のことです。例えば、プロジェクトを実行するメンバーは個々人がステークホルダーです。一方、顧客は往々にして組織であり、組織の意見を代表する者として窓口担当者が置かれることになります。

プロジェクトマネジメントのノウハウに於いては、プロジェクトにおけるステークホルダーは「すべて」特定するように求めています。

以前は、プロジェクトマネージャーの経験と勘によって重要なステークホルダーと重要でないステークホルダーが自然と選別されていました。ですが、プロジェクトに関する知識を体系化されたプロジェクト管理ガイドでは、まずすべてのステークホルダーを特定し、重要か否かは次のフェーズにおいて判断することが望ましいとされています。

ステークホルダーのスタンスとプロジェクトへの影響力を分析

ステークホルダーを特定したのち、それぞれのスタンスとプロジェクトへの影響力を分析します。これらの分析によって、それぞれのステークホルダーへどのような対応を取るのか、合理的に判断することができます。

スタンスとは、特定のステークホルダーがプロジェクトに協力的か、中立的か、対立的か、といったプロジェクトに対する姿勢を意味します。すなわち、スタンスの分析をごく端的に表現するなら、ステークホルダーが敵か味方かの区別を付ける作業、と言えるでしょう。

また、プロジェクトへの影響力とは、ステークホルダーのプロジェクトに対する権力、関心度など、プロジェクトのコントロールに影響を与えうる度合いのことです。ステークホルダーが持つプロジェクトへの影響力を分析することで、対応の優先度やリソース配分を決めることができます。

プロジェクトの意思決定や実行に関与できるようマネジメントする

ステークホルダーのスタンスとプロジェクトへの影響力を分析したのち、ステークホルダーがプロジェクトの意思決定や実行に適切に関与できるようマネジメントすることになります。

この段階においては、実際にステークホルダーと交渉したりコミュニケーションしたりすることで、プロジェクトへの支持を強化し、抵抗を最小限に抑えることを目指します。既存のステークホルダーを放っておくと関係性や立場が変化しますし、プロジェクトの進行中に新たなステークホルダーが現れることもあります。

すなわち、ステークホルダーマネジメントはプロジェクトの開始段階から反復的に行う必要があります。

ステークホルダーマネジメントの4つのプロセス

プロジェクト管理におけるステークホルダーマネジメントの大まかな流れを解説したところで、具体的な実行内容、すなわちプロセスについても解説していきます。まずプロジェクト管理ガイドにおいて、ステークホルダーマネジメントは4つのプロセスに分け、それぞれについてプロジェクト管理者が実行すべき内容を定めています。

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1. ステークホルダーの特定

ステークホルダーを「すべて」特定し、それぞれのスタンスや影響力を分析するよう求めています。この作業は簡単ではありませんが、ステークホルダーを特定するためのいくつかの手法が下記にて挙げられています。

1-1. 専門家の判断

効果的なステークホルダーの特定を行うために、トレーニングを受けた個人やグループからの専門知識を活用します。いわゆる「その道の専門家」であれば、誰がどのように携わる可能性があるのか、という経験知を持っています。これを明文化した形式知とすることで、ステークホルダーを迅速に明らかにすることができます。

1-2. データ収集

ステークホルダーを特定するため、データを収集することも考えられます。例えばアンケート調査によってステークホルダーに関する意見を得る、ブレーンストーミングによってステークホルダーを発見する、ブレーンライティングによってステークホルダーを発見する、といったことが挙げられます。

1-3. データ分析

既知の評価軸からステークホルダーを特定することもできます。例えば以下のような評価軸から、ステークホルダーの存在やスタンス、影響力を推し量ることができます。

利益:プロジェクトやその成果に関連する意思決定により、ステークホルダーは利益や損害を受ける。
権利:ステークホルダーは労働安全衛生法などの法的権利、および環境の持続可能性や史跡の保護といった道徳的権利を有する。
所有権:ステークホルダーは資産や財産に対する法的な権利を有する。
知識:ステークホルダーはプロジェクトに対して有益な知識を有する。
貢献:ステークホルダーはプロジェクトに対して資金、資源、人材といったリソースを提供できる。あるいは無形の方法によってプロジェクトを支援できる。

以上のような評価軸を通したデータ分析によって、定量的にステークホルダーの存在、スタンス、影響力を推定することができます。この他に、過去のプロジェクトにおいて得られた教訓を文書化したものから、ステークホルダーとスタンス、影響力を知ることができます。

1-4. データ表現

ステークホルダーのスタンスや影響力を図形表現することによって、ステークホルダーのスタンスや影響力、関係性などを直感的に把握できるようになります。小規模あるいは単純なプロジェクトであれば平面的に表現する二次元モデルを、大規模あるいは複雑なプロジェクトであれば立体的に表現する三次元モデルを、それぞれ採用することが望ましいでしょう。

コミュニケーションマネジメントのイメージ

上記は権力や影響度、および関心度の二軸を基準にステークホルダーをマッピングした例になります。三次元モデルの場合、上述した権力と関心度に加えて「関与度」を与え、関与度の軸に協力的か抵抗的かをマッピングすることで、ステークホルダーの立ち位置を把握することができます。

これによりプロジェクトの敵と味方を明確に把握しつつ、それぞれのステークホルダーがどの程度プロジェクトへ影響を与えうるのか把握することができます。

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2. ステークホルダー・エンゲージメントの計画

ステークホルダーの特定と分析を済ませたなら、ステークホルダー・エンゲージメントを計画する段階に入ります。「エンゲージメント」は「約束」などと訳されますが、多義的であり、ニュアンスに対する最適な和訳というのがありません。従ってエンゲージメントと片仮名で表記されることがほとんどです。

ステークホルダー・エンゲージメントの計画プロセスは、「プロジェクト・ステークホルダーのニーズ、期待、関心事、およびプロジェクトへの潜在的影響に基づいて、プロジェクト・ステークホルダーの関与を促す手法を決定するプロセス」と定義されます。

言い換えるなら、ステークホルダーがプロジェクトに影響を及ぼさなければならないタイミングにおいて適切に影響を及ぼせるように段取りを整え、あるいはステークホルダーによって予期せぬタイミングで影響が及ぼされた際には適切にその影響へ対処できるように準備を整える、と表現できます。

この「関係各所への対応」計画は定期的に更新される必要があります。プロジェクトにはステークホルダーが加入したり、あるいはプロジェクトからステークホルダーが離脱したりします。また、組織構造や業界に変革が起きた際にも、これに対応するために計画が見直されます。

3. ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント

事前に定めた計画手法に従い、ステークホルダー・エンゲージメントを実施します。

プロジェクト管理ガイドにおいては、「ステークホルダーのニーズや期待に応え、課題に対処し、ステークホルダーの適切な関与を促すために、ステークホルダーとコミュニケーションを取り、協働するプロセス」と定義されています。

コミュニケーションの方法としては以下のようなものが挙げられます。

  • 課題の特定とディスカッション
  • 会議
  • 進捗報告
  • 調査

また、ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメントでは人間関係とチームに対する配慮が必要となります。例えばコンフリクト(衝突)の解決。プロジェクトには資源不足、スケジュールの優先順位、個人の作業スタイルなど、コンフリクトが発生する要素が多く存在します。プロジェクト管理者はこのコンフリクトを適時、適切に解決する必要があります。

4. ステークホルダー・エンゲージメントの監視

ステークホルダー・エンゲージメントが適切に機能しているか、レビューする段階です。

エンゲージメント戦略と計画の改定を通して、ステークホルダーとの関係を監視し、ステークホルダーの関与のための戦略をテーラリングするプロセス。

テーラリングとは「洋服の仕立て・仕立て直し」という意味を持ちます。また、「何かを改定する」という意味でも使われます。ステークホルダーマネジメントにおいては「監視のプロセスを通してステークホルダーの現在の関与度を改善するための是正措置と予防措置を取る」という意味になります。

プロジェクト管理におけるステークホルダーマネジメントのまとめ

ステークホルダーの特定、エンゲージメントの計画、エンゲージメントのマネジメント、エンゲージメントの監視、という4つのプロセスは、プロジェクトの計画段階から終結段階まで反復して行われます。

プロジェクト管理におけるステークホルダーマネジメントの究極的な目標は、ステークホルダーの満足度を高めることです。プロジェクトに対して反対・抵抗を表明している人には説得によって支持的な立場に回ってもらう、中立的な立場に移行してもらう、またはプロジェクトへ関与する度合いを下げる、といった対応策を考える必要があります。

また、プロジェクトへ支持・賛成を表明している人には中立や反対の立場に回られないよう、日々の活動が必要となります。ステークホルダーマネジメントの鍵は、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションにあります。ステークホルダーの満足度は、プロジェクトにおける主要目的のひとつです。プロジェクト管理者はステークホルダーのニーズを特定し、その期待に応えるべくプロジェクトを注意深く運営する必用があります。

ステークホルダーマネジメントは、いわばプロジェクト管理における「政治」です。政治と聞くと腰が引けてしまう方もいらっしゃるかもしれません。ステークホルダーマネジメントは言い換えるなら、プロジェクト管理に自信が無い方にこそ学んで頂きたい知識と言えるでしょう。

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