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軍隊から学ぶマネジメントの基礎知識

2020/08/04

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軍隊から学ぶマネジメントのイメージ

「プロジェクトのマネジメントがうまくいかない。」、
「初めてプロジェクトのマネジメントを担当するがどうすれば良いかわからない。」という方は多いのではないでしょうか。うまくいかない、わからない、の大きな原因ひとつとして、「マネジメントに関する体系的な知識がない」ことがあげられます。

そこで体系的な知識を身につけるためにお勧めしたいのが、軍隊の組織論から学ぶことです。軍隊の組織論と聞くと、精神主義一辺倒であると考える方もいらっしゃるかもしれません。ですが実際に学んでみると、軍隊ほどよく研究され体系化が図られてきた組織はほかにない、といえるほど洗練されていることがわかります。

軍隊の組織論は、ビジネスにおけるマネジメントにも充分に役立ちます。軍隊と企業は目的を達成するための組織であることは共通であるためです。また、軍隊における「指揮官」は、民間企業における「マネージャー」そのものです。

ここでは軍隊における組織論の一部を解説しながら、企業におけるマネジメントへの応用についてご紹介します。

三面等価の原則

マネジメント理論には「三面等価の原則」という言葉があります。
職位と仕事を与える際、以下に記す三つを等しく委譲しなければならないという考えです。

責任(Authority):職務を達成する責任
権限(Responsibility):職務に見合った権限
義務(Accountability):職務実行状況を関係者に報告・説明する義務

以下にひとつずつ説明いたします。

責任(Authority)

三面等価の原則における「責任」とは、与えられた職務を果たさなければならないという意味です。

権限(Responsibility)

三面等価の原則における「権限」とは、組織において利用可能な全てのリソース(人員、物資、金銭、情報、技術等々)を運用する権限を指します。

義務(Accountability)

三面等価の原則における「義務」とは、職務や仕事の実行状況を上下左右、および外部の関係者へ説明し、報告する義務をさします。日本語訳の「責任」では意味がわかりにくいのですが、英語では「Accountability(説明責任)」と表記されます。

管理職、従業員、経営者の3者の視点

管理職、従業員、経営者の3者の視点でプロジェクトを管理するには

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三面等価の原則の重要性

アメリカ陸軍の野外戦闘マニュアル「ストライカー旅団戦闘チーム」に同様の表現があり、三面等価の原則はこのマニュアルから輸入したものと考えられます。

上位者が下位者へ仕事を委任する際に必ず行われるべきルールが三面等価の原則です。
軍隊における指揮官は、下位の指揮官へ任務を与えます。例えば、大きな作戦の中では小さな戦いが幾つも発生しますが、上位の指揮官が全員を細かに指揮することはできません。従って、それぞれの小さな戦いについては下位の指揮官へ任せることになります。

この際、責任・権限・義務の三つを適切に委譲しなければ、任務の成功は難しくなります。理解を促進するため、図に表してみましょう。

責任・権限・義務の三つのイメージ

このように、上位のリーダーが下位のリーダーへ任務を与える際、責任・権限・義務を分割して委譲しなければなりません。この三角形は組織のトップから末端に至るまで維持する必要があります。

企業におけるマネージャーも同様です。大きな部門の長が、部下にとあるプロジェクトを任せるとしましょう。このとき、部門長はマネージャーとなる部下へ権限・責任・義務の三つを適切に委譲しなければ、プロジェクトが成功は難しくなります。よくある失敗はマネージャーとなる者へ責任だけを与えることです。これではプロジェクトは成功しません。

部門長はマネージャーへ責任と同時に必要な権限を与え、説明・報告を行わせる必要があります。また、マネージャーは、説明・報告を確実に実施しなければなりません。

戦いの九原則

プロジェクトを取り巻く環境は常に変化します。
「競合他社が同様のサービスや製品を提供した」「所属企業の業績が悪化したためにプロジェクトの予算が削られた」などさまざまです。また、マネージャーは往々にしてあいまいで不確かな情報に基づいて意思決定を下す必要に迫られます。例えば、プロジェクトの詳細な工程が明らかでなくても作業開始の指示を出す、突発的なトラブルへ迅速に対応するために指示を出す、などです。

軍隊における指揮官も同様に、常に変化する戦況と不確かあいまいな情報に基づいて意思決定を下す必要に迫られます。特に、軍事行動においては「最善を尽くしても、必要な情報は四分の一しか得られない」といわれており、しばしば「戦場には霧がかかっている」と表現されます。霧の中にあっても、指揮官は最適な意思決定を下さなければなりません。このため、軍隊においては意思決定を下す手助けとして「教訓」が与えられています。

例えばアメリカ陸軍の「OPERATIONS」および陸上自衛隊の「野外令」は戦いの九原則という教訓を設けています。九つの原則を以下に示します。

目的の原則(Objective)
主導の原則(Offensive)
集中の原則(Mass)
経済の原則(Economy of Force)
統一の原則(Unity of Command)
機動の原則(Maneuver)
奇襲の原則(Surprise)
簡明の原則(Simplicity)
警戒の原則(Security)

上述の原則はあくまで「教訓」であり、成功を保証する「公式」ではありません。原則を理解し判断の材料にすることで、成功の確率を上げる手助けをするものです。

次の項ではそれぞれの原則について解説し、ビジネスの現場における応用例を示します。
これらの原則は実際にビジネスの現場でも日常的に用いられており、耳にする機会も多いでしょう。

1. 目的の原則

目的の原則とは、目的や目標の設定、およびその追求の二つを意味します。
ここでいう目的や目標とは、明確に規定され、重要な意義があり、達成可能である、という条件を満たさなければなりません。
端的に表現するなら「達成すべきことは何か?」がわかりやすく明文化され、実現に向けて行動がなされる必要がある、ということです。

目的の原則は最も重要であり、根本ともいえる原則です。戦史の負け戦の多くに「目的・目標のあいまいさ」を発見することができます。同様に、失敗したプロジェクトには例外なく「目的・目標のあいまいさ」を発見できます。

例えば、達成不可能な目標を設定しているのであれば、見通しのどこかにあいまいさがある、ということです。プロジェクトの目的や目標は何か、意義あるものか、達成可能かどうか、常に念頭に置き、メンバーに周知徹底する必要があります。

2. 主導の原則

主導の原則とは、主導権を握ること、すなわち自主的に意思を決定することです。詳細に述べるなら、自主的に意思を決定するということは、常に先んじて動き、速やかに方針を決定する、ということです。主導権を握るためには、情報の収集と周到な準備が必要不可欠です。

例えば、プロジェクトに予期せぬトラブルが発生したとしましょう。ですが、予期せぬトラブルに備えて予備のリソースを確保し、十分に対応できたならば、主導権を手放したことにはなりません。

逆に、対応に追われて本来の業務が放置されてしまったなら、主導権を手放したということになります。ベンジャミン・フランクリンの「仕事を追え。仕事に追われるな」という名言があります。仕事を主体的に追うことによって、余裕を持って対応ができるようになるのです。

3. 集中の原則

わずか2,000人ほどの織田信長が40,000人以上ともいわれる大軍を擁する今川義元を破った「桶狭間の戦い」はあまりにも有名です。織田信長は今川義元の本陣に対峙する箇所に戦力を集中させることでた勝利を収めることに成功しました。

ビジネスの現場においては、販売競争の戦略立案などに集中の原則が応用されています。例えば新たな飲料商品を企画・開発・販売するとしましょう。飲料の市場は巨大で、かつ大手の競合他社が存在します。しかし、ターゲットを絞って集中的に企画・開発・販売すれば、大手よりも自社が小規模であってもでも新商品の立ち位置を確立できる可能性が高まります。

4. 経済の原則

経済の原則は、集中の原則とは対極の概念です。戦力を一点に集中させるとき、他の方面に利用する戦力は制限しなければなりません。軍事学の古典である孫子にも「至るところ守らんとすれば、至るところ弱し」とあります。

マネージャーは時として「切り捨てる」という非情な判断を下さなければなりません。今まで培ってきた技術、実績、人員といった様々な要素も、プロジェクトの達成にそれほど役立たないのであれば「使わない」という選択をする必要があるのです。

5. 統一の原則

統一の原則とは指揮系統を一元化し、軍隊全体の方向性を統一することです。一人の指揮官に必要な権限を与えることです。日本にも「船頭多くして船山に上る」ということわざがあります。船頭つまり方向を決める人が多いと、迷走したあげく全員がとんでもない方向に行ってしまうというたとえです。

軍隊でも民間企業のでも、現実には様々な方向から圧力がかかり、指揮系統が多重化したり、組織の意思決定が統一されないことが往々にして発生します。こうなるとプロジェクトは迷走することになります。

だからこそ、統一の原則が重要となるのです。マネージャーは上下左右の関係者と調整し、協力を取り付け、指揮系統と全体の方向性に対して可能な限り統一を保つよう努めなければならないのです。

6. 機動の原則

機動の原則とは、目的の達成に必要なリソース(人員、金銭、物資、情報)をいち早く集結させることです。軍隊においては戦力となる兵員を素早く配置することを意味します。
ビジネスの現場においては、商品開発や重大なクレームの発生時などさまざまな状況においてこの原則があてはまります。

商品開発においては競合他社に先んじて顧客のニーズをつかみ、商品やサービスを開発し、優位を得られる市場に提供する必要があります。マネージャーは権限に含まれるリソースを迅速に運用しなければなりません。

7. 奇襲の原則

奇襲の原則とは、敵方の予期しない時期、場所、方法などにより、敵に対応する時間を与えずに打撃を加えることです。さらに、奇襲によって得た成果および主導権は速やかに拡大し、目標の達成に繋げる必要があります。

ビジネスにおいては、競合他社や市場にインパクトを与えるような行動を行うことがあります。最大の効果を生み出すためには、情報を秘匿し、先手を打つあるいは最良のタイミングを見計らう必要があります。

8. 簡明の原則

簡明の原則とは、命令や指示は明瞭かつ簡潔でなければならない、というものです。複雑または、あいまいな命令は、命令や指示を受ける側に誤解や混乱を引き起こします。
簡明な命令であるからこそ、全力で任務を遂行することができるのです。

ただし、簡明の原則は「何も考えない」ということを意味しません。課題について熟慮し簡単に実行できる内容にかみくだくことでシンプルな命令にたどり着くのです。

9. 警戒の原則

警戒の原則とは奇襲を避けることです。奇襲を避けるためには情報を常に収集し、備えを怠らないことが重要です。同時に「注意せよ」と命じるだけでなく、指揮官が具体的かつ効果的な施策を実施させなければなりません。

ビジネスの現場においては、機密情報の流出などが奇襲に相当し、これに対する具体的かつ効果的な施策がマネージャーによって講じられている必要があります。

例えば「業務用のノートパソコンを紛失するな」と命じるだけでは、具体的かつ効果的な対策とはいえません。この場合は「業務用のノートパソコンを紛失した際にも機密情報が漏れないよう、起動時のパスワードを複雑で推測しにくいものにせよ」「パスワードを5回連続して間違えたら、ロックされる設定にせよ」と命じ、実行させることが現実的です。

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現代マネジメント理論の生みの親、軍隊の組織論

現代マネジメント理論の生みの親、軍隊の組織論のイメージ

現代におけるマネジメント理論は、軍隊の組織論から大きな影響を受けていると断言してもよいでしょう。

例えばアメリカにおいて進歩を遂げたマネジメント理論は、ベトナム戦争後のアメリカ陸軍において研究された「OPERATIONS」および「TACTICS」から大きな影響を受けています。なお「OPERATIONS」は邦訳され、「孫子とクラウゼヴィッツ」(マイケル・I・ハンデル著、杉之尾宜生・西田陽一訳、日本経済新聞出版社)として刊行されています。

日本における組織論研究の第一人者、野中郁次郎氏も、太平洋戦争における旧大日本帝国陸軍・海軍の組織を研究し、有志と共に「失敗の本質」(戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎著、ダイヤモンド社)という書籍を著しています。初版1984年という古典ですが、ビジネス全般に通じる貴重な教訓が得られるとして名著として読みつがれています。

野中郁次郎氏は他に「知識創造企業」(野中郁次郎・竹内弘高著、梅本勝博訳、東洋経済新報社)という経営理論に関する書籍を出版しており、これも名著として知られています。
刊行元を見れば分かるように、軍隊の組織論は古くより経済界から日常的に応用されています。

特にトップダウン型の組織は軍隊の組織論と親和性が高く、軍隊における多くの組織論が企業におけるマネジメント理論へ輸入・応用されています。

プロジェクト管理ツールを用いたマネジメントの効率化

ここまで軍隊における組織論のビジネスにおけるマネジメントへの応用について説明してきました。しかし、実務においてこれらを含む様々な理論を応用しながらマネジメントを実行するのは大変なことです。

そこでお勧めしたいのが、 プロジェクト管理理論に基づいたTimeKrei(タイムクレイ)のようなプロジェクト管理ツールの活用です。

例えば、三面等価の原則における「説明・報告の義務」を実現するためには、プロジェクトの状態を関係者へタイムリーに周知しなければなりません。TimeKrei であればタスクの進捗・進行管理が容易になりますし、従業員もタスクの実施状況を効率的に報告できます。

また、警戒の原則・主導の原則を実現するためには、不測の事態によるダメージを回避し、リスクに対し先手を打たなければなりません。TimeKreiは個々のメンバーの日々の進捗を細かく把握できるため、危険をいち早く察知し、リスクに対して先回りすることを可能にします。

また各部署のマネージャーに必要な情報を集め、意思判断をサポートすることで統一の原則に従ったマネジメントを実現します。あるメンバーに与えたタスクは、そのメンバーの責任によって権限の範囲内で実行され、タスクの状況は TimeKrei 上で常にマネージャーが把握できることになります。

TimeKrei のようなプロジェクト管理ツールは、これまでに述べてきたマネジメントの知識を自動化してくれるツールである、ともいえるでしょう。

軍隊から学ぶマネジメント まとめ

軍隊における組織論の企業におけるマネジメントへの応用についてご紹介しました。より詳しく学びたい方は、ぜひ文中に示した書籍や、関連する書籍をご覧ください。

最後になりますが、いくらマネジメントに関する知識を習得したとしても、現場のマネジメントで生かせなければ意味がありません。学んだ知識を現場で生かすためには、多くの経験が必要となります。

知識を得たとしても一朝一夕にマネジメントが改善するわけではなく、場数を踏んで知識の生かし方を経験として蓄積しなければならないのです。これは軍隊における指揮官にも同じことがいえます。

とはいえ、知識を得ることは決して無駄ではありません。特に民間企業においてはマネージャーに必要な知識を体系的に学ぶ機会が少ないため、マネジメント理論の生みの親であり整理されている軍隊の組織論を学ぶのも一つの良い方法でしょう。

知識と経験、両方を得ることで、あなたのマネジメントがより良いものになることを願っています。

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