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失敗の事例から学ぶマネジメント

2020/03/24

スケジュール管理ツール

マネジメントを学ぶイメージ

なにごとも、成功より失敗から学ぶことが多いものです。もちろん成功要因を究明して次に活かすことは大切ですが、失敗事例にはそれ以上に次に活かすことができるヒントがあります。

失敗の事例をひもとくと、共通する「失敗の特徴」が見られます。日本最大手の信用調査会社である帝国データバンクでも『倒産の前兆』という書籍において「成功には決まったパターンが存在しないが、失敗には公式がある」と述べています。

日本の組織論の第一人者である野中郁次郎氏も旧日本帝国軍の「戦い方」と「負け方」を研究し、『失敗の本質』を著しました。タイトルにある通り、旧日本帝国軍が失敗した事例に共通することを指摘したものです。『失敗の本質』の刊行は1984年(昭和59年)ですが、現在も読み継がれている名著です。

本記事では失敗から学ぶ意義を解説し、マネジメントにおいて、失敗に共通することを紹介します。

過去の失敗から学ぶ

誰にでも失敗はあるものです。初めからすべてを成功させるなんていうことは不可能でしょう。重要なことは、失敗しないことより、失敗から学ぶことです。失敗の原因はどこにあったのか、自身がコントロールできたこととコントロールできなかったことは何だったのか、失敗を繰り返さないためにはこれからどうするべきか。自分を甘やかさず、過度に責めもせず、冷静に分析することで失敗を回避できるようになるでしょう。

他の誰かが失敗した事例から学ぶことも有意義なことです。誰かが失敗したなら、自分もまた失敗する可能性があると考えるべきでしょう。ドイツ帝国の初代首相、オットー・フォン・ビスマルクも「賢者は歴史から学ぶが、愚者は経験からしか学ばない」という言葉を残しています。鉄血宰相ビスマルクの歴史的な評価はさておいて、この言葉は重要な意義を持っているといえるでしょう。

残念なことに、多くの失敗は世に知られることがありません。失敗は誰もが隠したいものですし、成功は誰もが誇りたいものです。また、多くの人は失敗した体験を聞くより、成功した体験を聞きたがります。失敗の事例はなかなか知ることができないのです。

ですが、あなたが組織に所属しているなら、失敗の事例を見つけやすくなります。例えば、過去のプロジェクト文書を閲覧できるなら、失敗したプロジェクトをピックアップしましょう。

そのプロジェクトがなぜ失敗したのか、失敗を回避する手だてはなかったのか、自分が同じ境遇に置かれたならどう行動するか、といったことを分析しましょう。多くの事例を分析していくうちに、失敗したプロジェクトには共通することが見えてくるはずです。

次にプロジェクトマネジメントの失敗要因としてよく挙げられる要素を挙げてみましょう。

目的・目標があいまいである

目的や目標があいまいなまま、マネジメントに取り組んでしまうとほとんどのプロジェクトは失敗します。特にプロジェクトの途中から参加したマネジメント担当者は、プロジェクトの目的と目標がメンバーに周知されているか確認するところから始めるべきでしょう。

なぜ目的や目標があいまいだとマネジメントが失敗するのでしょうか。マネジメント担当者の使命は「プロジェクトを成功に導くこと」です。プロジェクトには複数のメンバーが関係します。目的や目標があいまいだと、メンバーは本来行うべき作業とは別の作業を実施してしまいます。マネジメント担当者が目的や目標を間違えていると、プロジェクト全体が迷走してしまいます。

例えば、顧客の勘定システムを製作する、というプロジェクトが立ち上がったとしましょう。このとき、まず顧客が本当に求めていることを「目的」にしなければ、プロジェクトは失敗します。システム開発においてはしばしば納期が重視されますが、ときには納期より品質が求められることがあります。

特に勘定システムというお金を扱うシステムの場合、正確さが求められるでしょう。顧客と十分なコミュニケーションを取らず、納期通りの納品だけを目指してしまっては、致命的なバグを抱えたシステムを納品してしまいかねません。

したがって「なぜ勘定システムを製作するのか」「新たな勘定システムによって何を達成したいのか」といったことをマネージャーは正しく把握する必要があります。また、求められている品質を達成できそうにない場合は納期の延長を打診するなど、交渉するスキルも必要となります。

『失敗の本質』も、旧日本帝国軍が失敗を重ねた第一の理由は「戦略や作戦の目的があいまいだったため」と指摘しています。

もちろん目的があいまいなまま、成功するプロジェクトもあります。ですがそれは、関係者全員にたまたま暗黙の了解が存在したという幸運に恵まれただけです。

目的や目標があいまいな状態とは、以下のような状態のことです。

・目的や目標が言語化されていない
・目的や目標をマネジメント担当者が把握していない
・目的や目標が関係者に共有されていない
・目的が複数ある
・目的が現実的には達成不可能なものである

このような状態にマネジメント担当者が気づき、手を打たないとプロジェクトは失敗します。したがって、チームメンバーに目的・目標が共有されているかどうか、マネジメント担当者は常に確認する必要があります。また、プロジェクトの実施を承認する立場にある経営者は、立案されたプロジェクトの目的が明確かどうか確認する必要があります。

プロジェクトの目的が「あいまいである」と判断するひとつの方法は、5W1Hを満たしているかどうかチェックすることです。

・Why:なぜするのか
・What:何をするのか
・Who:誰がするのか
・Where:どこでするのか
・When:いつするのか
・How:どのようにするのか

六つの項目のうち、特に注意したいのは「Why:なぜするのか」と「What:何をするのか」です。この二つは特にあいまいになりがちで、ときには混同されてしまうこともあります。

プロジェクトを可視化する

WBSだけでは不十分?プロジェクトを可視化する

3つの視点
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「Why:なぜ行うのか」があいまいである

「Why:なぜ行うのか」のイメージ

「なぜ行うのか」はプロジェクトの「目的」です。多くの場合、表面的な目的と、目的の裏に隠れたニーズがあります。目的とニーズを正しく把握することで、プロジェクトの失敗を回避することに繋がります。

社内にプロジェクト管理ツールを導入する、というプロジェクトを考えましょう。なぜプロジェクト管理ツールを導入するのか、導入することによってどのような効果を得たいのか、といったことが明確でないと、このプロジェクトは失敗するでしょう。

例えば「人的リソースを適切に配分したい」という目的があるとしましょう。一見すると明確なように思えますが、実はこの目的はあいまいです。そもそも、社内に存在する人的リソースが十分かどうか明らかではないためです。

確かに、プロジェクト管理ツールは人的リソースを適切に配分するための一助となります。ですが、プロジェクト管理ツールを導入したからといって必ず解決するものではありません。やみくもにプロジェクト管理ツールを導入してもうまくいかず、プロジェクトは失敗するでしょう。

この場合、まずは社内の人的リソースが十分かどうかを調べるべきです。存在しないものを配分することはできません。「十分な人的リソースが存在するにもかかわらず、マネージャーの負担が大きすぎるために適切な配分ができない」といった状況であれば、プロジェクト管理ツールの導入を検討すべきであるといえるでしょう。

他にも「プロジェクトの進捗状況を可視化したい」という目的があるとしましょう。この目的もあいまいです。進捗状況を可視化することによってどんなメリットを得たいのかが明確でないと、やはりプロジェクトは失敗するでしょう。

進捗状況を可視化しただけでは、プロジェクトはうまく運営できません。進捗状況を可視化することによって、マネージャーは集中的に管理すべきタスクを知ることができます。メンバーもまた、いま何に注力すべきかが理解できます。進捗状況の可視化は、プロジェクトに関わる人々が良質なコミュニケーションを取るために実施するものです。

また、可視化の方法も様々です。ガントチャートを利用したほうがよいケースもあれば、バーンアウトチャートを利用したほうがよいケースもあります。もちろん両方を併用するケースもあるでしょう。重要なことは、なにを可視化するのか、なぜ可視化するのか、可視化によってどのようなメリットを得たいのか、ということが明確になっていることです。

さらにプロジェクト管理ツールによって「マネージャーの実力を評価したい」という目的も考えられます。マネージャーの評価軸を作るためにプロジェクト管理ツールを導入するのは、よくない目的であるといっていいでしょう。

プロジェクト管理ツールの状況がマネージャーの評価軸になると、マネージャーは予定通りにプロジェクトを進行させることだけに集中してしまいます。具体的には、プロジェクトの実態とはかけ離れた「実績」をプロジェクト管理ツールへ入力してしまう、といったことが考えられます。

プロジェクト管理ツールは実績と予定を比較し、問題へいち早く対処するためのものです。マネージャーの評価軸は、別に設けたほうがよいでしょう。

「What:何をするのか」があいまいである

「何をするのか」はプロジェクトの「目標」です。目標は目的を達成するためのマイルストーンです。何をするのかがあいまいだと、やはりプロジェクトは失敗してしまいます。社内にプロジェクト管理ツールを導入する、というプロジェクトを再び考えてみましょう。このプロジェクトでは「何を」すべきなのでしょうか?

クラウド型のプロジェクト管理ツールを導入することが決まったとしましょう。目的は「人的リソースを適切に配分する」ことです。プロジェクト管理ツールは十分に目的を達成できる機能を持つことが分かっています。このあと、何をどこまでやるべきでしょうか?

ツールを提供する企業と契約を結び、社員全員のアカウントを作成するところまでをプロジェクトの目標にしたとしましょう。この場合、後になってプロジェクトは失敗したと判断される可能性が高いでしょう。プロジェクト管理ツールを導入するだけでは片手落ちです。

せっかく導入したツールも、使いこなさなければ意味がありません。したがって、社員がツールを使いこなせるよう、教育する時間が必要です。

では、教育を終えたらプロジェクトは成功したといえるでしょうか。おそらくは、まだ足りません。プロジェクトの目的は「プロジェクト管理ツールの導入により、人的リソースを適切に配分すること」です。

ツールを導入する前と後で、人的リソースの配分が円滑に行われているかどうか検証する必要があるでしょう。ツールを実際に利用している社員の声も聞き、よりよい運用方法を立案することも必要となるはずです。

以上のように、なぜするのか、何をするのか、ということがよくよく検討されていないと、プロジェクトは失敗に終わります。

プロジェクト管理の秘訣

エンジニア1人あたりの生産性を向上する

プロジェクト管理の秘訣
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進捗状況が把握できていない

プロジェクトの目的が明確で、目標も目的に沿うものだとしましょう。ですがプロジェクトの進捗状況を把握できないと、集中的にマネジメントすべきタスクが分かりません。結果としてスケジュールは遅延し、プロジェクトは失敗に終わってしまいます。

従来、プロジェクトの運営はマネージャーの勘に大きく頼っていました。才能に恵まれ、十分な知識を持ち、場数を踏んだマネージャーがいればプロジェクトはうまく進みました。

ですが誰もが経験豊富なマネージャーであるとは限りません。また状況によっては、マネジメントを担当しながらメンバーの一員として実作業に携わることも一般的です。知識も才能も経験も乏しく、また多忙であっても、マネージャーの役割まで担わなければならなくなることもあります。このような環境にあって、勘だけで進捗状況を把握するのは至難のわざでしょう。

幸い、現代はIT化によって個人の勘に頼っていた「ノウハウ」を誰にでも使える「道具(ツール)」へ加工することができるようになりました。プロジェクト管理ツールもそのひとつです。プロジェクトの進捗状況を可視化し、メンバー全員が共有することで、プロジェクトを円滑に進めやすくなっています。

言い換えるなら、IT化とプロジェクト管理ツールによって、マネジメントに関する才能と経験の差を埋めやすくなっているのです。

過去の失敗したプロジェクトを分析した結果、マネージャーの多忙や経験不足が原因のひとつであると判明したなら、プロジェクト管理ツールを導入するべきでしょう。プロジェクト管理ツールは、有能なマネージャーの「ノウハウ」を「道具」として提供するものです。有効に利活用し、プロジェクトの進捗状況を素早く効果的に把握できるようになりましょう。

コミュニケーションがうまくいっていない

失敗したマネジメントを振り返るとき、次のような声を聞くこともあるでしょう。

– メンバーの間で必要な情報がやりとりされていなかった
– メンバーがマネージャーの指示通りに行動できなかった
– 顧客の要望を正しく理解できていなかった

このような声が挙がったときは、ステークホルダー間のコミュニケーションがうまくいっていなかったことを示しています。

コミュニケーションとは「情報の交換」です。マネージャーはあらゆる手段を用いて、ステークホルダー間の「情報の交換」が素早く、かつ正しく行われるよう取り計らう必要があります。情報に関する誤解は、プロジェクトが失敗する大きな原因の一つです。

現場ではマネージャーが実作業も兼務していることがしばしばあります。マネジメントに費やせる時間はますます減ってしまうため、効率的なコミュニケーション手段を選ばなければなりません。

これもまた、現代はIT化によって様々なコミュニケーションツールを使い分けることができます。電子メール、社内掲示板、チャットツール、音声通話、ビデオ通話などなど、状況と用途に応じて最適なコミュニケーションツールを利用しましょう。もちろん、ときには対面して口頭で会話したほうがよいこともあります。

失敗から学ぶマネジメント まとめ

多くの失敗には共通するパターンがあります。私たちがより多くを学ぶべきは、成功の事例ではなく失敗の事例なのです。

自身の失敗だけでなく、他人の失敗から学ぶことも有意義です。同じ人間である以上、誰かが失敗したなら、自分もまた同じ失敗をすると考えるほうが合理的でしょう。失敗した事例はなかなか世に知られることがありませんが、組織に所属していれば、その組織における失敗の事例を見つけることができるでしょう。

失敗の原因を冷静に分析することで、あなたのマネジメントはきっと失敗しにくくなります。失敗を回避できれば、いくつかの大成功を収めることも可能になるでしょう。

現代はIT化が進んだことで、様々な失敗の事例へアクセスしやすくなっています。過去のプロジェクト文書を閲覧できるなら、ぜひとも分析しましょう。また、IT化は個人の「ノウハウ」を誰でも使える「道具」にしやすくなっています。失敗の分析とあわせて活用し、失敗しないマネジメントを目指しましょう。

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